パウル・クレーと共感覚

クレーの絵は絵であり、色であり、詩であり、曲であり、空間をもち、時間が流れている。
クレーの作品は「絵」にとどまらず、作品がもつさまざまな感覚や現象は鑑賞する際に同時に
おしよせ、見ている私にとって整理されない混乱さと同時に解放感のようなものをもたらす。
クレーの作品は重層的でありながら、分析できるわかりやすさをもっているため、見ている私は
混乱してもそれらを認識できる。共感覚のように同時にさまざまなものを連想させ、
「具体的・客観的・制限された」といった単一的な表現とコミュニケーション手法のもつ障害から
開放されながら、なおかつ容易に「認識」することもできる。
クレーの作品が「混乱(=認識できない、無秩序、抽象=純粋)」と
「分析(整理された秩序、認識=表現者と鑑賞者の相互の関係)」を同時にもつことで、
複雑さと容易さ、感じることと考えることといった、相反するものが私の中に同時に存在する。